遠道 八千代
調合士:
「春の日」
やはらかな蕾、芽を突く梢の繍眼児(しゅうがんじ)。
陽光の痺れに、草叢(くさむら)の蝕み。
滔々(とうとう)と流れに横たわれば片喰(かたばみ)。
薬指で瞼に、時に気を触れ、わらう白い手。
桜も咲いて、うららかな春の日。あたたかくて、まぶしくて、目が眩む。痺れて息を引き取るような、そんなやさしい春の日。季節が巡るものでよかった。それにひたっていたら、きっと爪先まで季節に染まってしんでしまうから。
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作品名:春の日作者名:遠道 八千代連絡先(Twitter)等Twitter:@endo_trpg