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裁ち切る
飴山瑛
調合士:
裁ち切る
筋の浮いた足の甲
ほの赤いつまさきに
そっと指を絡める
色のない視界
薄墨色の輪郭が
ひとつ
水音ばかりが響いて
黒い髪を伝って
落ちて
花弁が折れる
泥は断ち切られて
水面に円い傘の影
細胞がざわめく
黄色い風が手招きする
咲いた血脈を
鎌でざくりと刈り取る
欲しい
なにかが
欠落を作って
そこにからだをはめ込む
削り取られた
あなたの破片を抱く
永遠はピンを刺され
うつくしさは
終わりへと向けてふくらんでいく
静かな息
生命の息づく頬に
そっと口づけをした
首筋に手をかけて
どこにも行かなければいいのに
思ったのだけれど
杭は打ち込まれる
冷たい手のひら
無垢の床に
黒い跡
栓の抜かれた小瓶が
からっぽで転がる
宇宙が透けている
光は
肌をじりじりと焼くのに
肺が冷えて
叩き壊された時計の
横に佇むあなたを
わたしはきっと
望んでいた
恐れる事さえ
きらめいているのに
詩
処方箋
あまりにもうつくしいものは、ホルマリンに漬けてしまいましょう。
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クレジット表記
作品名:裁ち切る
作者名:飴山瑛
連絡先(Twitter)等
Twitter:@Ameyama_trpg
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