top of page
瞬きの果て
飴山瑛
調合士:
瞬きの果て
息ひとつない部屋
白い煙が
睫毛の先を覆う
ぼやけた世界を
なんとなく見まわす
少し眠くて
青ざめた瞼
降りてくる
音もなく
砕けた小瓶を
気にする人もない
コルクの張りついた靴底
落ちて 埃が立つ
指紋に浸みこんだ静寂
触れるものもない
握りしめた跡
探す人もなく
縫いつけられた糸を外してゆく
酸素の匂いがして
肺は
奥から凍り付く
思考だけがある
肉体さえ失い
こぼれた願いも
祈りと
呼ぶべきものさえも
救いになることがあるのかも
きっとわたしは
知ることはない
紡がれた意思ひとつ
それに躓いて
転んでしまっただけだから
重なった躰
その上に倒れ込み
少し湿った木の床は
涙でぬれる事さえない
詩
処方箋
温度というのは、何かが動くことによって生まれます。
ただ音もなく、眠ることは、しあわせでしょうか。
利用規約
・無断転載禁止
クレジット表記
作品名:瞬きの果て
作者名:飴山瑛
連絡先(Twitter)等
Twitter:@Ameyama_trpg
bottom of page